まず、自己紹介で話す項目を5つ書き出してください。完成した例文を探すのは、そのあとで間に合います。面接官の言い方は、会社によっても人によっても違うからです。「簡単に」と言われる日もあれば、「1分ほどで」と時間を示される日もあるでしょう。一続きの原稿として丸暗記していると、言い方が想定と違った瞬間に足し引きができません。
面接の冒頭で何をどこまで話すか、もう決まっていますか。項目に分けておけば、外すか足すかを選ぶだけで済みます。この記事では、5つの項目を必ず言う3つと足す2つに分け、面接官の言い方ごとの並べ方まで決めていきましょう。なお、自分の強みを相手へ売り込む説明を自己PR、面接官が一つの話題を重ねて掘り下げる質問を深掘りと呼びます。
転職面接の自己紹介は、話す項目を先に決めてから組み立てる
自己紹介の長さや項目を定めた公的な決まりは、調べた範囲では見つかりませんでした。よく見かける「1分で」「300文字ほどで」という数字は、求人サイトの記事が置いている目安です。国や労働局が応募者へ示した基準ではありません。だから準備の順番を、例文探しから項目の書き出しへ入れ替えます。
答えが割れていることは、数えると見えてきます。転職の面接の自己紹介について投稿された相談を、Yahoo!知恵袋で2件読みました。この記事を書く前に読んだ時点で、付いていた回答は合計4件です。話す量に触れた3件は「1〜3分で5項目」「1分で3項目」「氏名と年齢だけで充分」の三通りに分かれていました。残る1件は量ではなく、感想ではなく事実で述べるという中身の指摘でした。
ここまでが、数えて分かった事実です。ここから先は私の見方になります。割れているのは読者が目にする答えのほうで、話す材料の側ではないと思うのです。だから例文を一つ選んでも、迷いは消えません。
手がかりになるのは、話し方より中身のほうです。鹿児島労働局が公開している面接編の資料(PDF)は、前職の職務内容を「営業」「経理」のような一語で済ませないよう示しています。つちかった能力を具体的に説明し、自分の言葉で簡潔明瞭に話す、という記載です。ただし、この資料に「自己紹介」という語はありません。前職の職務内容の説明と、自己PRの練習についての記載として読んでください。
最初にすることは一つだけ。紙かメモに、自己紹介で話せそうな項目を5つ書き出します。文章にせず、単語のままで十分です。面接当日の服装がまだ決まっていないなら、転職面接の服装の決め方。指定の読み方から迷わず判断する手順を先に片づけておくと、自己紹介の準備に集中できます。
自己紹介に入れる項目を5つ書き出し、必ず言う3つと足す2つに分ける
書き出した5つは、必ず言うものと、指示と時間で足すものへ分けます。必ず言うのは3つです。名乗りとあいさつ、今の仕事と担当している範囲、そして締めの一言。残る2つ、担当してきた仕事の中身と応募先とのつながりは、指示と時間で足す枠にします。この区分は公的な基準ではなく、この記事の整理として読んでください。
| 話す項目 | 区分 | 短く言うときの形 |
|---|---|---|
| 名乗りとあいさつ | 必ず言う | 時間をもらったお礼と氏名を一文で |
| 今の仕事と担当している範囲 | 必ず言う | 会社の業種、職種、任されている範囲を一文で |
| 担当してきた仕事の中身 | 指示と時間で足す | 続けた年数と、任されていた範囲を具体的に |
| 応募先とのつながり | 指示と時間で足す | 応募した職種と、今の仕事で重なる部分を一文で |
| 締めの一言 | 必ず言う | 次に聞いてほしい話題を一つ置いて閉じる |

必ず言う3つは、どんな言い方でも残す
この3つを残す理由は、聞き手が話を受け取る順番にあります。誰がどんな立場で話しているのかが先に分かっていないと、そのあとの説明を置く場所が決まりにくくなる。私が採用担当として面接をするときも、最初に知りたいのはお名前と、今どんな業務のどこまでを任されているかの2点です。ここが抜けたまま強みの話が続くと、次の質問を組み立てにくいと感じます。
足す2つは、指示と時間で決める
担当してきた仕事の中身と、応募先とのつながりは、毎回入れなくてかまいません。指示や時間の指定があったときに足す枠として、空けておきます。こう考えると、自己紹介は覚える原稿ではなく、組み替えられる部品の集まりになる。
会社ごとに聞き方は違うので、区分に迷う項目も出てくるでしょう。ご自身の5項目は、もう書き出せていますか。迷う項目があれば、次の節の言い方ごとの足し方から決めてください。
面接官の言い方に合わせて、足す項目と順番を決める
足す項目と並べる順番は、面接官の言い方ごとに先に決められます。当日その場で考えるより、対応表を作っておくほうが早い。次の表は、必ず言う3つを土台にした組み替えの目安です。
| 面接官の言い方 | 必ず言う3つに足すもの | 並べる順番 |
|---|---|---|
| 「簡単に自己紹介を」 | 足さない | 名乗り → 今の仕事と担当範囲 → 締めの一言 |
| 「1分ほどでお願いします」 | 担当してきた仕事の中身 | 名乗り → 今の仕事と担当範囲 → 担当してきた仕事の中身 → 締めの一言 |
| 「自己PRを交えて」 | 担当してきた仕事の中身(結果まで) | 名乗り → 今の仕事と担当範囲 → 担当してきた仕事の中身と結果 → 締めの一言 |
| 「経歴を中心に」 | 担当してきた仕事の中身(古い順に) | 名乗り → 担当してきた仕事の中身を古い順に → 今の仕事と担当範囲 → 締めの一言 |
| 言い方の指定が無い | 応募先とのつながり | 名乗り → 今の仕事と担当範囲 → 応募先とのつながり → 締めの一言 |

表の中で時間に触れているのは、面接官が「1分ほどで」と言った行だけです。こちらから秒数や文字数の目安を決めることはしません。相手が言葉で示した長さに、足す項目の数を合わせるだけで足ります。
言い方の指定が無いときは、必ず言う3つに応募先とのつながりを足して、一度切ります。冒頭で全部を話し切ると、志望動機や自己PRを聞かれたときに手持ちの材料が残りません。先ほどの相談の回答にも、述べたキーワードから深掘りの質問が来る前提で答えを用意しておく、という指摘がありました。冒頭で置いた言葉が次の質問の入口になる、という回答者の見方です。
短い形の文の例を、一つだけ置きます。名前も勤め先も、説明のために作ったものです。
本日はお時間をいただきありがとうございます。山田と申します。現在は住宅設備の販売会社で、営業事務として受発注と請求書の作成を担当しております。応募した営業事務のお仕事とも重なる部分が多いと感じております。前職で任された範囲について、のちほどお話しできればうれしいです。
この長さで一度切って、あとは質問を待ちます。応募先とのつながりを言葉にしづらいときは、転職の志望動機の例文と作り方。自分の経験に置き換えて書くと転職の軸の例6つ|求人選びと面接で使える「確認できる一文」への変え方が材料になります。
誇れる数字が無い時は、担当範囲と続けた年数で置き換える
売上や件数のような数字が手元に無くても、担当してきた仕事の中身は話せます。数字の代わりになるのは、担当していた範囲と続けた年数です。どちらも数えれば分かる事実なので、盛らずにそのまま言えます。
事実として並べられるものを挙げます。
- 担当していた範囲(誰の、どの業務を、どこまで)
- 任されていた業務の種類
- その仕事を続けた年数
- 引き継いだ相手や、教えた人数
やりがい・好き・得意といった感想だけの言葉は、この枠に入れません。先ほどの相談でも、やりがいという感想は印象に残らないという指摘が出ていました。ただし、これは回答者一人の見方です。公的な資料の側では、鹿児島労働局が自慢話を避けて具体的な事実を盛り込むよう示しています。
置き換えると、こういう形になります。次も、説明のために作った文の例です。
事務の仕事を5年続けており、現在は二つの部署の伝票処理と、新しく入った方への手順の説明を任されています。
ご自身の職歴をうまく思い出せないなら、書き出す作業から始めるほうが早い。転職の履歴書の書き方。迷う項目から先に片づける記入手順に、職歴と担当範囲を並べる手順がまとまっています。
自己紹介で話さなくてよいことを、先に外しておく
入れる項目を決めたら、入れない項目も決めておきます。応募した仕事に関係のない話は、自分から入れなくてかまいません。その分の時間を、担当範囲の説明へ回せます。
線引きの手がかりは、公的な資料にあります。厚生労働省の公正な採用選考の基本は、面接では職務に必要な適性と能力を評価する観点から質問項目を決めるよう示しています。本籍や出生地、家族に関することなど、適性と能力に関係のない事項は尋ねないよう留意を促すものです。ここで注意したいことが一つあります。この資料は事業主へ向けたもので、応募者が何を話してよいかを定めた決まりではありません。
話してはいけないと国が決めているわけではない、ということです。ただ、会社側が評価に使わない話題がどれかは、この資料から読み取れます。だから、自分から入れなくてよい話を見分ける材料にはなる。趣味や私生活の話も同じ見方でよいでしょう。応募した仕事と重なる部分があるなら一言で触れ、無いなら外します。
自分から入れなくてよい話は、こういうものです。
- 本籍や出生地など、生まれ育った場所の話
- 家族の人数や、家族の仕事に関すること
- 応募した仕事と重ならない趣味や、私生活の予定
私が面接をしていても、私生活の話が長く続くと、お仕事の話をうかがう時間が減って残念に感じます。冒頭は、あなたの担当範囲を伝える場所に使ってください。
締めの一言で、次に聞いてほしい話題を置く
自己紹介の終わり方は、決まり文句でなくてかまいません。締めの一言には、次に聞いてほしい話題を一つだけ置きます。「よろしくお願いいたします」の前に、これから深く話したい経験を一つ添える形です。
なぜ置くのかというと、冒頭で出した言葉がそのまま次の質問になりやすいから。相談の回答にも、述べたキーワードから深掘りの質問が来るという見方がありました。私が採用担当として面接をするときも、締めで置かれた話題はそのまま次にうかがいたくなります。話題を置かずに終わると、面接官は手元の書類から質問を選ぶことになる。どちらが話しやすいと思いますか。
最後に、準備の終え方です。原稿を丸暗記せず、項目の順番だけを覚えて声に出してみてください。鹿児島労働局の資料でも、自己PRは1分以内のスピーチとして練習しておくよう示されています。これは自己PRについての記載で、自己紹介の長さを定めたものではありません。言いよどむ場所が見つかったら、その項目の言葉を短く削ります。
声に出すときは、次の点を確かめてください。
- 項目の順番どおりに言えているか
- 「あの」「えー」が続いていないか
- 一つの項目だけが長くなりすぎていないか
- 締めで置いた話題が、次に聞かれてもよい内容か
一人での練習に不安が残るなら、ハローワークの相談支援という選択肢もあります。応募書類の作り方や面接の受け方について、専門の職員が無料で相談に応じる窓口です。応募する求人に合わせた受け答えの助言や、オンラインのセミナー動画も案内されています。自己紹介だけの相談を受けるとは書かれていないので、面接の受け方を相談できるところまでと考えてください。
よくある質問
自己紹介と自己PRは何が違いますか?
自己紹介は、名乗りと今の仕事の範囲を伝えて、面接の入口をつくる部分です。自己PRは、自分の強みを相手へ売り込む説明にあたります。この記事の5つの項目でいえば、強みや結果まで話すのは「担当してきた仕事の中身」を足したときだけ。「自己PRを交えて」と言われたら、そこへ結果まで含めて答えます。
面接で自己紹介を求められなかったらどうすればよいですか?
無理に差し込まなくて大丈夫です。読んだ相談の回答の中にも、転職の面接で自己紹介を聞かれることは少ないという意見がありました。ただし、これも回答者一人の見方なので、聞かれない前提で準備しないほうが安全です。書き出した5つの項目は、職務経歴を聞かれたときの材料としてそのまま使えます。職務経歴とは、これまで担当したお仕事の内容と期間のことです。
用意した文章をそのまま暗記して話してもよいですか?
暗記そのものは止めませんが、一続きの文章として覚えるのはおすすめしません。言い方が想定と違ったときに、足し引きができなくなるからです。覚えるなら項目の順番までにしておき、言葉は当日その場で選びます。
まとめ
転職面接の自己紹介は、例文を覚える作業ではありません。話す項目を5つ書き出し、必ず言う3つと、指示と時間で足す2つに分ける。この一手間で、面接官の言い方が変わってもその場で組み替えられます。
- 必ず言う3つは、名乗りとあいさつ、今の仕事と担当している範囲、締めの一言
- 足す2つは、担当してきた仕事の中身と、応募先とのつながり
- 言い方の指定が無いときは、3つに応募先とのつながりを足して一度切る
- 数字が無いときは、担当していた範囲と続けた年数で置き換える
- 締めの一言に、次に聞いてほしい話題を一つ置く
- 自分から入れなくてよいのは、応募した仕事に関係のない話
- 原稿は丸暗記せず、項目の順番だけを覚えて声に出す
長さの正解を探して止まっていた時間は、項目を書き出す10分で終わります。面接の受け方そのものは、ハローワークの窓口で無料の個別相談ができます。相談先を比べておきたいなら、転職のキャリア相談はどこへ?悩み別4つの相談先と選び方もあわせてどうぞ。
無料相談
冒頭の自己紹介を声に出してみて、話す中身が薄いと感じたなら、原因は話し方ではないかもしれません。応募先を選んだ理由や、転職で大事にしたいことが、まだ言葉になっていないだけということもあります。面接の受け答えを直す前に、そこを整理しておくほうが遠回りに見えて早い。
