履歴書の志望動機欄を前に、例文サイトを何本も読んだのに手が止まっていませんか。例文の経歴や実績は書き手本人のものです。経歴の違う例文を写せば、自分に無い経験を名乗ることになります。かといって自分の言葉にすると「御社の理念に共感しました」程度で終わってしまう。そんな状態の方に向けた記事です。
例文は写す文ではなく、空欄に戻してから自分の事実で埋め直す材料です。この記事では、まず公的な資料が示す志望動機の枠を確認しましょう。そのうえで架空の例文1本を使い、あなたの経験に置き換える手順を示します。履歴書のほかの欄で迷っている方は、転職の履歴書の書き方。迷う項目から先に片づける記入手順も参考にしてください。
転職の志望動機は、応募先を選んだ理由・自分の経験・入社後にしたいことで組む
志望動機欄は、3つの枠を用意してから書き始めるのが近道です。根拠にするのは、国の職業紹介の窓口であるハローワークが配布する応募書類のパンフレットです。配布元はハローワークインターネットサービスの応募書類の案内ページで、パンフレットもそこから入手できます。パンフレットでは、「志望の動機」はなぜその会社に応募したいかという理由を書く欄とされています。欄に盛り込む点は次の3つです。
| 枠 | 中身 |
|---|---|
| ①応募先を選んだ理由 | なぜその会社を選んだか |
| ②自分の経験や能力 | 自分のどんなところを仕事に活かせるか |
| ③意欲 | どんな仕事をしてその会社に役立ちたいか |
神奈川県のハローワーク川崎北が公開しているセミナー資料「応募書類編」も、志望動機の柱を3本挙げています。並び順は違いますが、中身は上の表の3つと同じです。民間の例文サイトの解説も、呼び方や分け方は違っても、この3つと重なる内容が中心になっています。
枠を先に決めると、書いている途中で中身の偏りに気付けます。たとえば「理念に共感しました」だけの文は、①の枠に感想が入っただけです。②と③は空いたままなので、読み手には応募者が何をできる人なのかが伝わりません。3つの枠を紙に書き出し、それぞれに何が入るかを見てから文章にしましょう。
公式の記載例は、空欄のある骨組みとして示されている
完成した例文をそのまま写さず、空欄つきの形に戻してから使ってください。ハローワークのパンフレットに載っている参考の記載例は、完成した文ではありません。「骨組み」として4つ示され、自分なりにアレンジして自分の言葉で組み立てるよう書かれています。
2026年9月16日に確認した版で4つの骨組みの空欄を数えると、8か所・11か所・6か所・11か所で、合わせて36か所ありました。空欄になっているのは、たとえば次のような部分です。
- これまでにしてきた仕事
- 応募先のどこに魅力を感じたか
- どの面で役に立ちたいか
公式の資料は、応募者ごとに中身が変わる語をあらかじめ抜いた形で示しているわけです。完成した例文は、この空欄に書き手本人の事実がすでに入った状態にあたります。経歴の違う例文を写せば、あなたが経験していない仕事や実績を名乗ることになるでしょう。
パンフレットには、志望の動機とアピールポイントは面接で最もよく質問される項目だとも書かれています。私が採用担当として面接をするとき、例文の言い回しのまま書かれた志望動機は、理由を一段深く聞くと説明が続かないことが多いと感じます。反対に、書類の文がご本人の経験から組み立てられていれば、質問への答えも自然につながるものです。
志望動機の例文を、自分の経験に置き換える手順
置き換えは、仕分ける→空欄に戻す→埋める、の3段階で進めます。ここでは、この記事のために作った架空の経歴の例を使います。家電量販店で5年間、キッチン家電の売り場を担当してきた28歳の会社員を想定しました。応募先は住宅設備メーカーのショールームで、来場者に商品を案内する職です。求人票には「来場者への商品説明」「見積もり依頼の受付」「来場予約の管理」と書かれているとします。
架空の経歴の例文は次のとおりです。
家電量販店で5年間、キッチン家電の売り場を担当し、来店されたお客様から使い方の相談を受けてきました。貴社のショールームは、実際に設備に触れながら相談できる点に魅力を感じています。求人票にある来場者への商品説明では、売り場で身につけた、使う場面から商品を選んでいただく説明を活かせると考えました。入社後は、見積もり依頼の前の相談を丁寧に受け、来場者が納得して選べる案内を担いたいと考えています。

1. 1文ずつ3つの枠に仕分ける
まず、例文の各文がどの枠に当たるかを決めましょう。
- 1文目:②自分の経験
- 2文目:①応募先を選んだ理由
- 3文目:②経験を応募先の業務で活かす
- 4文目:③意欲
パンフレットでは、②は応募先の業務で自分のどんな経験や能力を活かせるかという観点から考える、とされています。3文目で経験と求人票の業務名を結び付けているのはそのためです。
2. 本人の事実と応募先の情報を空欄に戻す
次に、書き手本人や応募先にしか当てはまらない語を「〜」に戻してください。対象は3種類です。
- 書き手本人の事実(勤務先の業種・年数・担当・していたこと)
- 応募先の固有の情報(ショールームの特徴・求人票の業務名)
- 入社後にしたいこと
戻した後の形は、たとえば次のとおりです。
〜で〜年間、〜を担当し、〜してきました。貴社の〜は、〜点に魅力を感じています。求人票にある〜では、〜で身につけた〜を活かせると考えました。入社後は、〜を担い、〜したいと考えています。
ここまで戻せば、例文の経歴があなたと違っていても使える形になります。文の型だけを借りて、中身はすべて自分で用意するということです。
3. 空欄ごとに材料の出どころを決めて埋める
最後に、空欄を何で埋めるかを決めてください。
| 空欄 | 埋める材料 | 出どころ |
|---|---|---|
| 勤務先の業種・年数・担当・していたこと | 自分の事実 | 自分の職歴、担当した仕事の記録 |
| 応募先の特徴・魅力を感じた点 | 応募先の公開情報 | 求人票・店舗・製品や商品・広告・ホームページ |
| 求人票の業務名・活かす力 | 求人票の記載と自分の事実の重なり | 求人票の仕事内容 |
| 入社後に担いたい仕事 | 求人票の業務の範囲で自分ができること | 求人票の仕事内容 |
例文の「実際に設備に触れながら相談できる点」は、架空の応募先の特徴です。実際の応募先について書くときは、公開情報で確かめた特徴だけを入れてください。入社後の仕事も、求人票に書かれた業務の範囲から選ぶと、面接で聞かれても説明がぶれません。
自分の事実の空欄が埋まらない場合は、職歴を先に書き出すと進めやすくなります。手順は転職の自己分析のやり方|30分で職歴を強みと求人条件に変えるにまとめました。事務職へ応募する場合は、職種に合わせた作り方があります。事務職へ転職するときの志望動機|経験を「正確さ」だけで終わらせない4段階をご覧ください。
応募先を選んだ理由は、求人票と公開情報から拾う
「なぜこの会社か」の空欄は、応募先の情報の中から自分の経験とつながる記載を1つ選んで埋めましょう。パンフレットは、書く前に応募先企業をよく知るよう求めています。確認先の例として挙げられているのは次の5つです。
- 求人票の内容
- 店舗
- 製品や商品
- 広告
- ホームページ
この5つを見比べ、自分がしてきた仕事と重なる記載に印を付けてください。ハローワーク川崎北の資料でも、求人票をよく見て企業がほしい人材をつかみ、自分との共通点を探す手順が示されています。先ほどの架空の例なら、ショールームで設備に触れながら相談できるという特徴が①に当たります。売り場で使い方の相談を受けてきた経験とつながるので、選んだ理由として筋が通るのです。
一方で、給料や休日などの条件で求人を選んだため、何を動機にすればよいか分からないという相談も質問サイトに投稿されています。条件で選ぶこと自体を否定する記載は、今回確認した公的な資料にはありません。ただしパンフレットは、「貴社で学びたい」のような個人的で一方的な希望や事情だけではアピールになりにくいと注意しています。川崎北の資料も、家から近いといった理由は補足としてならよい、という扱いです。
ですから、条件は①の中心に置かず、求人票の中から自分の経験とつながる記載を探して主な理由にしてください。応募先を選ぶ理由そのものが言葉にならない方もいるでしょう。その場合は、何を大事にして求人を選んだのかを先に整理するのが近道です。転職の軸の例6つ|求人選びと面接で使える「確認できる一文」への変え方が役に立ちます。
欄の大きさと職務経歴書に合わせて、書く量を決める
書く量は、応募先の指定や欄の大きさに合わせて決めてください。公的な資料に字数の決まった正解は書かれていません。欄が小さい場合は、3つの枠をそれぞれ1文に絞ると、中身を欠かさずに収めやすいでしょう。
履歴書の様式によっては、志望の動機の欄が特技やアピールポイントの欄と共用になっています。パンフレットは、こうした欄では個人的な活動より志望の動機などを優先して書くよう示しています。ハローワーク川崎北の資料も、この欄に志望動機だけを書いてもかまわないという立場です。
職務経歴書にも志望動機を詳しく書くなら、履歴書との分け方を決めておきましょう。川崎北の資料では、履歴書の欄に応募する仕事を書き、詳細は職務経歴書に記載した旨を添える方法も紹介されています。どちらに書く場合も、面接で同じ説明ができる中身にそろえておくと安心です。志望の動機以外の欄で迷う場合は、転職の履歴書の書き方。迷う項目から先に片づける記入手順を参照してください。
根拠が見つからない空欄は、作らずに調べるか相談する
根拠が見つからない空欄は、作文で埋めずに空けたまま次の手を決めましょう。架空の実績や聞いていない社内事情で埋めると、面接で質問されたときに説明できません。志望の動機は面接で最もよく質問される項目なので、パンフレットも面接での説明をイメージして書くよう示しています。
立派な理由を持っておらず、書き方の例を調べても書けないという相談も質問サイトで見かけます。けれど、空欄に入れる事実は立派な実績である必要はありません。私が採用担当として話を聞く場合、小さくてもご本人が自分の言葉で説明できる事実の方が、面接で話が続きやすいと感じます。
埋まらない空欄があるときは、次のどれにするかを決めてください。
| 状況 | 次にすること |
|---|---|
| ①や③の空欄に使える記載が見当たらない | 求人票と公開情報を読み直す |
| 空欄は埋まったが、文として伝わるか不安 | ハローワークの窓口で書類の添削を受ける |
| 応募先を選ぶ理由そのものが定まらない | 転職で何を大事にしたいかを相談する |

ハローワークでは、職業相談窓口で書類の添削アドバイスを受けられます。書き方のセミナーも開かれており、ハローワークインターネットサービスの応募書類の案内ページで確認できます。どこへ相談するか比べたい方は、転職のキャリア相談はどこへ?悩み別4つの相談先と選び方も参考にしてください。
よくある質問
同じ志望動機を複数の応募先に使ってもよいですか?
パンフレットは、応募先企業ごとに3つの枠の中身を検討するよう示しています。②の自分の経験は共通でも、①の応募先を選んだ理由と③の入社後の仕事は、応募先ごとに求人票を見て埋め直しましょう。
条件で選んだ会社の志望動機はどう書けばよいですか?
条件で選んだこと自体を否定する記載は、公的な資料には見当たりません。ただ、条件だけでは伝わりにくいので、求人票の中から自分の経験とつながる記載を探して①の空欄に入れてください。条件は補足にとどめると、理由の中心がぶれません。
自己PRとはどう分ければよいですか?
パンフレットでは、志望の動機はその会社に応募したい理由を書き、アピールポイントは経験や能力を活かして貢献したい趣旨を書くと分けています。同じ経験を使う場合も、志望動機では応募先を選んだ理由とのつながりを軸にしてください。
まとめ|転職の志望動機と例文の使い方
転職の志望動機は、3つの枠で組むのが基本です。応募先を選んだ理由と自分の経験、そして入社後にしたいことを入れます。ハローワークの記載例も、完成した文ではなく空欄つきの骨組みとして示されています。
気になった例文を1本だけ選び、書き手本人の経歴と応募先の情報に線を引いて空欄に戻してみませんか。求人票を横に置き、空欄をご自身の事実で埋めれば、面接でも同じ説明ができる志望動機に近づきます。根拠が見つからない空欄は作らず、調べるか相談してください。
無料相談
例文を空欄に戻してみたものの、①の「なぜこの会社か」だけがどうしても埋まらない方もいるはずです。その場合、志望動機の書き方ではなく、転職で何を大事にしたいかがまだ定まっていないのかもしれません。書類の添削はハローワークの窓口で受けられるので、文の直しはそちらを使ってください。応募先を選ぶ理由そのものを整理したいときは、次の相談の案内も確認してみてください。
