「事務職はAIでなくなる」という記事を見て、今の仕事を続けてよいのか焦っていませんか?
先に答えると、生成AIの影響を受けると予測されることと、事務職の仕事がなくなることは同じ意味ではありません。国際労働機関(ILO)の2025年の更新報告は、職業を細かい作業に分けて生成AIとの重なりを測っています。そのうえで、人の関与が必要な仕事が多いため、多くは仕事がなくなるより中身が変わると説明しています。
この記事の目的は、職業全体の予測から、あなたの今週の仕事へ視点を戻すことです。日々の事務作業を「入力・出力・例外・確認する人」の4列で書き出し、職場のルールの範囲で学ぶ作業を一つだけ選ぶ手順を紹介します。最後に扱うのは、現職で備える道と事務以外へ移る道を同じ条件で比べる方法です。
将来の雇用を予測したり、特定の職種の安定を約束したりする記事ではありません。職種を変えるかどうかは、表を書き終えてからでも決められます。
AIに触れる仕事の割合と失業の予測は違う
「生成AIの影響を受ける」という予測は、事務職がなくなるという意味ではありません。こうした予測が数えているのは仕事の中の作業であり、職を失う人の数ではないからです。
ここでいう影響度とは、一つの職業をいくつもの作業に分け、生成AIがその作業をどの程度こなせそうかを見積もった目安です。ILOの2025年の更新報告も、この考え方で職業ごとの影響を整理しています。
報告は、多くの職業では人の関与が欠かせないため、置き換えよりも仕事の変容が中心になると説明しています。ただし、影響度は失業する確率ではありません。日本の個々の会社が事務職の採用を減らすかどうかも、この報告からは読み取れません。
見出しと元の資料を分けて読む
強い言葉の見出しを見たときは、元の資料が何を数えているかを確かめると落ち着いて読めます。
| よく見る言い方 | 元の資料が示しやすいこと | 読み手が確かめること |
|---|---|---|
| 事務職はAIに奪われる | 職業の中の作業と生成AIの重なり | 自分の担当作業がどれに当たるか |
| 何割の仕事が置き換わる | 調査ごとに対象と定義が違う数字 | 対象の国と時点と定義 |
| 事務はもう将来性がない | 出典がなければ書き手の意見 | 根拠の資料が示されているか |
その見出しは、職業全体の話でしょうか、それとも作業の話でしょうか?作業の話だと分かれば、次の節で自分の仕事へ当てはめて考えられます。
自分の事務作業を入力と判断に分けてみる
どの作業が変わりそうかは、職業名ではなく、自分の担当作業を一つずつ書き出すと見えてきます。同じ「一般事務」でも、会社によって任される範囲が大きく違うためです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の一般事務のページでは、文書の作成やデータの入力、点検、連絡などが仕事の例に挙がっています。ただし、具体的な担当範囲が会社によって異なる点には注意が必要です。

実務表の4つの列
この記事で「実務表」と呼ぶのは、作業を次の4つの列で書き分ける表です。
- 入力:作業を始めるときに受け取るもの(メール、紙の伝票、依頼の電話など)
- 出力:作業の結果として作るもの(入力済みの表、送付する書類など)
- 例外:いつもの手順では片付かない場面(金額が合わない、記載が抜けているなど)
- 確認する人:出力が正しいかを最後に見る人
記入例
以下は説明のための架空の例です。実在の職場の記録ではありません。
| 作業 | 入力 | 出力 | 例外 | 確認する人 |
|---|---|---|---|---|
| 請求書の入力 | 取引先から届くPDF | 会計ソフトへの登録 | 金額や品目が注文と合わない | 経理の上長 |
| 会議資料の作成 | 部長の手書きメモ | 配布用の資料 | 数字の出どころが分からない | 部長 |
| 備品の発注 | 各部署からの依頼 | 発注書 | 予算を超える依頼 | 自分 |
| 電話の取り次ぎ | 外部からの電話 | 担当者への伝言 | 誰の担当か分からない用件 | 自分 |
書き出す手順
- 1週間分の作業を並べる
- 毎日の作業だけでなく、月末の締め作業も入れる
- 最初は5行ほどでも構わない
- 例外を具体的に書く
- 「たまに困る」ではなく、何が起きたときに手が止まるかを書く
- 誰かに聞いて解決した場面を思い出す
- 確認する人の欄を埋める
- 自分が最後に見ているなら自分と書く
- 誰も見ていない作業は空欄のまま残す
表から読み取れること
入力と出力の形が毎回決まっていて、例外が少ない作業は、道具で手順を短くできる候補です。反対に、例外が多い作業や、あなた自身が確認する人になっている作業には、人の判断が残りやすいと考えられます。
この見方は、記事として提案する整理の方法です。どの作業が実際に自動化されるかを保証するものではなく、職場の設備や取引先の事情によっても変わります。
職場のルールを確認して一つの作業を学ぶ
備えとして最初に確かめたいのは、何を学ぶかより、職場で生成AIをどこまで使ってよいかというルールです。許可のないまま取引先の情報を入力すると、学ぶ前に職場の信頼を損ねるおそれがあります。
確認先は、社内規程や情報システムの担当部署、直属の上司です。規程が見当たらない場合も、自己判断で業務の情報を入力せず、まず上司に聞くのが安全です。
職場で確かめる3つの質問
- 使ってよい道具はどれか
- 会社が契約している道具があるか、個人の無料版は使えるか
- 入力してはいけない情報は何か
- 顧客の個人情報や取引先との契約内容をどう扱うか
- 出力は誰が確認するか
- 実務表の「確認する人」と同じ人でよいか
練習と実務を分ける
職場の許可が出る前でも、架空のデータを使えば手順の練習はできます。練習と実務を分けておくと、どこで人が確認するかもはっきりします。
| 場面 | 使ってよい情報 | 結果を確かめる人 |
|---|---|---|
| 自宅での練習 | 自分で作った架空の名前と数字 | 自分 |
| 職場で許可された試用 | 規程で認められた範囲の業務情報 | 実務表の確認する人 |
| 許可が出ていない段階 | 業務の情報は入力しない | 試さないため該当なし |
この表で決めたいのは、どこまでを練習で済ませ、どこから職場の確認を通すかという線です。線を引いてから試せば、うまくいかなかったときも業務への影響を避けられます。
学ぶ作業を一つだけ選ぶ
学ぶ作業の候補は、実務表のうち次の条件がそろうものです。
- 入力と出力の形が毎回ほぼ同じ
- 例外が少ない
- 職場のルールで試すことが認められている
たとえば、架空の会議メモから議事録の下書きを作り、抜けている決定事項を自分で探す練習が考えられます。ここで身につくのは、道具の操作より、出てきた結果のどこを疑うかという確認の目です。例外を知っている人ほど、この確認に向いていると考えられます。
一度に複数の作業を変えようとすると、どこで間違いが起きたのか追えません。一つの作業で、入力から確認までを最後まで通してみてください。
現職での備えと転職を同じ条件で比べる
AIへの不安だけを理由に、今すぐ事務以外の職種へ移る必要はありません。職種名だけで将来の安定は決まらず、移った先の仕事も作業に分けて確かめる必要があるからです。
質問サイトには、AIで事務職が減ると聞いて別の職種へ移るか迷う相談が投稿されています。経験を名乗る人の回答も並びますが、それぞれの将来予測は個人の意見です。雇用の見通しを判断する根拠としては使えません。

同じ条件で並べる比較表
| 比べる条件 | 現職で備える | 事務以外の職種へ移る |
|---|---|---|
| 収入の下限 | 今の給与を基準に考えられる | 応募先の求人票で確かめる |
| 勤務地と勤務時間 | 今の条件を前提に考えられる | 応募先ごとに確かめる |
| 学ぶ時間 | 業務と並行して確保する | 新しい仕事を覚える時間も要る |
| 仕事への関心 | 今の作業に続けたいものがあるか | その職種の作業に関心が持てるか |
| AIの影響 | 自分の実務表で確かめられる | 移る先の作業も同じ表で確かめる |
表の上2行が今の職場で満たせていて、続けたい作業もあるなら、まず現職で一つ学ぶという選択が残ります。反対に、生活条件が今の職場では満たせないなら、AIとは別の理由で転職を考える根拠になります。
あなたが今の仕事を離れたい理由は、AIへの不安でしょうか、それとも生活条件や仕事への関心でしょうか?理由が生活条件なら、比較表の上2行を満たす応募先から探すと迷いにくくなります。関心が理由なら、移りたい職種の作業も実務表に書き出して比べてみてください。
働き方の軸が決まらないときの相談先
実務表と比較表を書いても決められないときは、困り事が「応募書類や求人探し」なのか「働き方そのものの整理」なのかを先に分けてください。分けておくと、相談先を選び間違えにくくなります。
| 困り事 | 合う相談先の例 |
|---|---|
| 応募書類を見てほしい | ハローワークなどの公的な窓口 |
| 求人を紹介してほしい | ハローワークや転職エージェント |
| 何を軸に働くか決められない | 求人紹介を行わないキャリアコーチング |
働き方の整理で止まっている場合の選択肢の一つが、POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)です。求人の紹介を行わない有料のキャリアコーチングで、転職を前提にせず価値観やキャリアの設計を扱う相談先です。
そのため、求人の紹介や内定、応募書類の添削を受けたい場合には目的が合いません。料金や相談の内容は、申し込む前に公式の案内で確認してください。
この記事の実務表と比較表は、誰かに相談しなくても使えるように作ったものです。相談するかどうかは、表を書き終えたあとに迷いが残っているかで決めて構いません。

